BACK グレイト・ジョーンズ通り     (全文) 

 
 
ホ−ネス通りやクラウン通りは、3〜4階建の古いレンガ造りのビルが並んでいる。一階はお店で小さなバ−やレストランが多い、服や靴の店、美容院もある。これら裏通りのビル街は、1階が低いように思える。ビルの高さや間口の広さは、それらのビルが面している通りの広さに合わせている。その為、狭い裏通りを歩いてもビルの威圧感はない。店のショーウインドーの飾りは、洗練されていて綺麗だ。古いビルの谷間は、曇り空も手伝ってちょっと寂しい。右手にある新しいビルは、表面を綺麗に「研磨した石」が使われていて、「ピカピカ」と輝いている。不思議にも、その新しい建物だけが目立つことはない。周囲の茶色や灰色の古いビルのレンガの壁と、よく調和している。石畳のFowness通りで大きなガラス窓の店が目に止まった。木製の大きなドア−があり、左側は広いガラス窓のショ−ウインドウになっている。そこには情緒豊かなバッグが並べられ、奥の棚に指輪ネックレス置かれている。床は、すっきりとした木製で温かみを感じる。一人の若い女性店員さんがいる。ガラス窓に白色のデザインされた字で、「タブ−」と書かれている。いかがわしい物でも売っていると想像した。

 凝視していると、若い女店員さんが中から出てきた。彼女は僕を「客」だと思ったのかニコッと会釈してくれた。「どうして、タブ−なのですか」と冗談に聞いてみた。「タブ−でないのが、タブ−なんですよ」と彼女は言った。「写真を一枚撮らせてくれませんか」と言うと、「いいですよ」と言いながら、横によけてしまった。「あなたと店を一緒に撮りたいんです。そこに立っていてほしいんです」とお願いすると、「いいわよ」とドア−に凭れてニッコリとポ−ズした。さらに、フォーネス通りからデイム通りに向かった。狭い裏通りも車道と歩道の区別がある。通行人もまばらで車の姿も無く静かだ。石畳の車道で、10cm四方ぐらいの灰色の石が敷き詰められている。冬は、道も壁も石の「冷たい世界」になるのだろうか。でも、確信を持って言えることがある。人も少なく商売気のない街、しかし、どこを歩いても寂しさは感じられない。何か秘められた豊かさがあるのだろう。ショウウインド−の中の個性のある「作品」も心を和ましてくれる。特に木製のドアーや看板は全て個性がある。中には彫刻された字もある。26文字の「書」の芸術が織り込まれている。時には、ケルティックイメージの文字も見える。レストランやパブの前には必ず鉢植えの花が置かれている。こんな「花の街」が心を落ち着かせているのだろう。

 Dame通りが近い、「ガラス張り」のパンやさんがある。窓を通して二段に陳列されたパンが見えている。ジ−パンの若い女性が2人店に入って行った。お腹が空いて来た、レストランのカンバンが目につく。路上に大きなワゴンがあり、服やシャツが山積みされている。店の中を覗いてみたが、店員さんの姿はない。ワゴンごと品物がなくならないかと心配した。この一風変わった店の前から、前方にデム大通りが見えている。さらに歩くと、一階全てが大きな透明の総ガラス窓の新しいお店がある。「CATS」と黒字のデザインされた字で、店名が描かれている。ガラス窓を通して店の中が見えている。若い美容師が髪をカットしている、とてもモダンな美容院だ。個性ある店がディム通りまで続いている。一階がワインバ−の新しいビルがある。壁が白く光沢のある石造りの店だ。黒い木枠の中に、透明ガラスの入った大きな窓がある。その上部に白ペンキで『Le Rendez Vous』と店名が描かれている。入り口のドア−は、深緑色の木枠の中に大きな透明ガラス窓で、その上に『Food Wine & Music』と白色の字で描かれている。テ−ブルやカウンタ−が見えている。さらにレストランを探しながら歩いた。